法学編入の勉強について
こんにちは。IHです。
今回は、法学編入の勉強法、特に私が受験した北大の2年次編入試験の勉強法について説明したいと思います。
独学で合格したんだからさぞすごい勉強法だったのだろう、と皆様は期待されているかもしれません。が、恐らく特別なことは一切していません。とはいえ、今振り返ってみると穴の多い勉強をしていました。そのため、私が行った勉強法を記した上で、今だったらきっとこうする、と皆様への提案を併記する形で説明したいと思います。
ちなみに今回記すのは勉強のプロセス、流れになります。このような体系で勉強するといいよ、という提案です。そもそも勉強ってどうやったらええねんという方向けには、また別で短めの記事を書こうかなと思います。
まず、北大法学部2年次編入の試験科目は小論文と英語です。小論文はある程度書けるし差もあまりつかないだろう、と推測し、英語に注力することにしました。
以下、英語編と小論文編に分けることにします。
1. 英語
まず、英語は2、3ページの長文が2題出題されますが、ここで私は早速思い違いをします。独学勢特有の情報の欠如から、Googleで編入英語について検索して情報を斜め読んだ結果、勝手に和訳だらけだと思い込んでしまいました(確かに和訳は多いですが、近年下線部の内容説明や記号問題なども出題されています。和訳自体は半分も占めていないのではないでしょうか)。
そのため、当時は大学で使用していたアカデミックなリーディングテキストや院試向けのテキストを辞書片手に片っ端から全訳するという単純かつ愚直なやり方で勉強をしていました。辞書を傍らに勉強していたのは、試験が紙辞書の持ち込み可だったからですね。
この勉強法を採用した背景には、文法や構文把握にはある程度の自信があった、ということもありましたが、この勉強法には3つの瑕疵があります。それは、
①実際の出題形式に全く即していない。
②法学・政治学をはじめとした社会科学系のテーマを取り扱った問題をあまり解いていない。
③下線部和訳・説明は何らかの意図があって下線を引いているため、単純に全訳は効率が悪い(全訳が出題される大学の場合は別です)。
ことです。そのため、今勉強をするなら、
①取り敢えず過去問を手に入れ、出題形式・傾向を分析する(一部の予備校で過去問を販売しているので、遠方に住んでいても入手は可能です)。
②大学受験程度の英単語を完璧にする。文法事項についても軽くチェックしておく(分厚い文法書読破とかは却って非効率的なのでやめましょう。挫折します。問題演習の段階で分からなかったら調べる程度でOKです)。
③それを下地に英文解釈及び長文読解の勉強をする(ここまで基礎固めです)。
④時間があれば社会科学系の英単語を覚える(当日は辞書が使えるため、長文読解及び辞書引きに慣れていれば必ずしもする必要はありません)。
⑤過去問や難しめの長文を読む。時間があればGoogle ScholarやCiNiiなどを使って英語で書かれた法学・政治学の論文を検索して読み、アカデミックな英文に免疫をつけておく(時間がなければabstractとconclusionだけでも十分でしょう)。
といったように体系的に勉強をするでしょう。英語は特に基礎が大切ですから、詰まったときには基礎に戻る勇気も必要です。
どのテキストを使うかですが、③までは大学受験時代に使っていたテキストで十分です。評判の良いテキストなら何でもいいでしょう。④については、社会科学系にフォーカスした英単語帳が販売されています。⑤は、やはり過去問を中心に演習するのがおすすめです。テキストを使用される場合は、ジャパンタイムズの社説集のように、ある程度社会科学系のトピックを扱ったものが望ましいです。
勉強する上では、理解した気にならないように気を付けましょう。勉強において重要なのは勉強時間が長いかどうかではなく、内容が充実していたかどうかです。間違っても文を目で追っているだけ、みたいな状態にならないようにしましょう。
また、特段の事情が無い限り、問題演習の段階では、大学や予備校の先生に添削してもらうことをおすすめします。過去問には模範解答などが付属していないため、模範解答の不備を補完する必要があります。先生にチェックしてもらえば、添削と同時に解答例や解答の指針が示されるはずです。
2. 小論文
小論文については、ある程度論述力に自信があったため、ほとんど勉強をしていませんでした。しかし、だからといって解説をおざなりにして流すのも憚られるので、簡単に解説します。
まず、私は、
①小論文の方法論的テキストを読み、立論、論述の仕方を把握する。
②背景知識となる法学・政治学の基本的な知識を補充する。
③過去問や北大後期の赤本などを使い、たくさん解く。
という流れで勉強しました。
大枠としてこちらの勉強法で問題ないとは思いますが、一点付言しておくと、これを読んでいる皆さんの中に編入試験を受験される方がいらっしゃるならば、必ず添削をしてもらいましょう。添削をしてもらうデメリットはありませんが、してもらわないデメリットはたくさんあります。
自己添削も不可能ではありませんが、当然ながら添削できる範囲が自己の知識・能力の範囲内に留まります。少々敷衍できても繙けるのは法学・政治学のテキストくらいで、しかもそこにある知識は付け焼刃で活用できるようなものではありません。そのため、自己の知識・能力の埒外に存在する事項についての添削は不可能です。
受験を検討されている皆さんは大学や予備校の先生などにお願いして必ず添削してもらうようにしましょう。大学に高い学費を納めているので、皆さんは大学の先生の知恵をお借りする権利を有しています。
それと、当日は原稿用紙のようにマス目のある横書きの解答用紙を使用するので、普段の勉強でも横書きの原稿用紙をインターネットでプリントアウトして使用されることをおすすめします。普通の原稿用紙を購入して横書きで使うのもよいですね。原稿用紙の使い方についてもおさらいしておくと、当日焦らずに済みます。3年次を併願される方は小論文に特化した対策をする必要は無いかとは思いますが、原稿用紙の使い方や小論文の解き方の大枠を把握するくらいはしておいたほうがよいです。
3. 専門科目
編入試験といえばやはり専門科目は外せませんね。北大では3年次編入試験において、小論文ではなく専門試験が課されます。専門科目については、大学によってどのような分野から出題されるのか、その傾向が大きく異なります。ちなみに北大の場合は法学と政治学に分かれています。以下、北大について説明します。
法学の分野からは憲民刑のうちどれかが出題される傾向にあります。高度な内容や複雑な論点からは出ませんが、とにかく範囲が広いです。憲法の人権編と民法の総則は優先的にやっておきましょう。ちなみに憲法は統治編も出題されます。刑法は総論だけで構いませんが、近年よく出題されているのでチェックしておきましょう。民法の物権・債権については基礎が分かっていれば大丈夫です。たぶん分かっていなくても何とかなります。また、近年は直接出題されてはいませんが、基礎法学を勉強しておくと法律について取っ付き易くなるのでおすすめです。
また、過去問の傾向を見てみると、前年に出題された法律の分野からは出題されない傾向にあることが分かります。R3年度は民法、R2年度は憲法、H31年度は刑法、H30年度は民法、H29年度は刑法……といったように、2年連続同じ分野から出題はされていないことが分析できます。但し、あくまで傾向の話で、絶対に100%出題されないと断言することはできませんので、仮にR4年度に民法が出題されても私は責任を負いかねると今のうちに言っておきます。
政治学の分野からは政治学の用語や概念などの重要なキーワードを説明させる問題がよく出題される印象です。また、内容を説明した上で、そこから一歩踏み込んだ説明を要求される場合もありますが、内容についてよく理解していれば答えを導ける問題です。
専門科目に限り、北大のホームページに過去問が掲載されているので、それをまず見てみましょう。それを見れば傾向や形式がしっかりと把捉できるはずです。編入 | 法学部
3年次編入を受験される場合、専門科目で高得点を取って合格することも十分可能です。範囲は確かに膨大ですが、いずれにしても基礎の範囲から逸脱することはありません。極稀に一部悪問難問が出題されて予備校などに袋叩きにされますが、そのような問題はほとんどの人が解けません。これを取らないと落ちるなどと不安がる必要は一切ありません。
R2年度試験では、専門科目の試験の一部において、北大法学部の憲法の定期試験と同じような問題が出題されたと聞いております。マジかよ。つまり、難易度自体は大学の定期試験とそれほど変わらないよってことです。もちろん北大に関してはそうというだけであり、京都大学や大阪大学などの最難関大学ではその限りではないかもしれませんが。
4. 参考書
私が使った参考書及びおすすめの参考書を紹介します。
①はじめに
まず一つ、注意しておくべきことは、参考書マニアにならないことです。何冊も何冊も同じような参考書に手を出してその全てを中途半端で終わらせるより、1、2冊を隅々までやり込んだほうが皆さんの糧となり、合格に繋がるはずです。
②英語
単語帳についてはお手持ちのものでOKです。いくつかピックアップしますが、これ以外のものでも構いません。2冊こなすことで基礎単語については盤石になります。この中から全部買うなどはする必要はありません。
文法書についてもお手持ちのものでOKです。分からない文法事項を調べるために使いますが、今の時代はGoogleがあるので、最悪無くても何とかなるかもしれません。
- 作者:川崎 芳人 / 久保田 廣美 / 高田 有現 / 高橋 克美 / 土屋 満明 / Guy Fisher / 山田 光
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英文解釈や長文読解のテキストについても何でもいいです。私が使っていたものはこれです。
また、こちらも定評があります。
以上のテキストに熟れてきた段階で、発展的な勉強ができます。基本は過去問をベースにしますが、これらのテキストをやってみてもよいかもしれません。いずれも読み物として使いましょう。
ジャパンタイムズ社説集 2019年下半期(MP3音声無料ダウンロード&CD1枚つき)
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③小論文
まずは、書き方を学ぶテキストを入手しましょう。以下にいくつか挙げておきます。
書き方が分かるようになったら、実際に小論文を書いてみましょう。学部後期試験ないし法科大学院の過去問、または法科大学院向けのテキストを解くのがおすすめです。
後期試験の赤本についてはどの年度のものを使用されても構いません。古本屋さんで複数冊手に入れるとかなりの問題数を確保できます。形式もほぼ同じなので、非常に参考になります。
法科大学院向けの小論文テキストはこのようなものがあります。課題文型の小論文とはまたテイストの異なったものですが、大学の図書館にあれば目を通してみることをおすすめします。
④法学
私自身は専門科目を受けていませんが、編入において評判の良い参考書をいくつか挙げることにします。基本的には私が読んだことのある本です。
まずは法学です。小論文にも役立ちます。私がやった中でもおすすめの2冊です。
どちらも名著です。どちらか1冊でいいので熟読しましょう。
次に、憲法・民法・刑法の基礎を固めましょう。私が好きなのはこれです。
伊藤真先生のファーストトラックシリーズです。平易な言葉遣いで書かれているので、初学者の方でも十分読み進めることが出来ます。図書館に置いてあることもあるので、見つけたら是非読んでおきましょう。なかったら購入しても良いくらいです。民法は総則・物権・債権(時間が無ければ総則のみ)、刑法は総論だけで構いません。憲法は全部読んでおきましょう。とりわけ人権編は大切です。
ちなみに、刑法の改正については、ホームページに掲載されている補遺で補うことが可能だと思われます。同一ページに訂正表も掲載されておりますので、両者を参考にしながらお読みください。刑法 | 弘文堂
基礎が盤石になり、自家薬籠中のものとすることができたら、それだけでもいい点は取れると思いますが、時間に余裕があれば以下に挙げる本を読んでみましょう。
まずは憲法です。
お馴染み芦部憲法です。憲法はこれ1冊でいいのではないかと思えるほどの大ボリュームです(北大の講義でも教科書は芦部憲法です)。縦書きでなかなか難しいですが、基礎が盤石なら読み進められるはずです。ただ、如何せん大ボリュームなので、少々オーバーワークかもしれません。
民法はいろいろ本がありますが、以下のものがおすすめです。
発展的に勉強するのは総則だけで大丈夫でしょう。私はこちらの本をおすすめしておきます。内容は難しいですが、とても分かりやすく書かれています。ただ、編入試験で出題されないような細かい論点についても取り扱っていますので、独学だけで切り抜けるぞって方には少々扱いが難しいかもしれません。基本的には、基礎の勉強で身につけた民法の知識を肉付けする形で知識を補填させればOKです。
続いて刑法ですが、刑法は総論からしか出ないので、前掲のファーストトラックだけで十分です。と言うかこのファーストトラック刑法は入門書の割に結構詳しく書かれているので、これをマスターするだけで編入試験には十分だと思います。これ以上の内容が出たら北大は袋叩きに遭います。一応紹介しておくと北大法学部の講義で使っているのはこれです。間違いなく名著ですが、編入試験を軸に考えれば明らかにオーバーワークです。
ちなみに2020年の講義で使用される教科書はこれです。
本当にファーストトラックだけで大丈夫かな、と心配な方は、判例集を読んでみましょう。私がおすすめする判例集はこれです。漫画のような図が載っていて、要点が簡潔に書かれているので、初学者でも読み進められると思います。刑法は判例がほぼ形を変えずにそのまま出題されることもしばしばあるので、判例を知っておくことは大切です。ファーストトラックに出てくるメジャーな判例について読む程度でOKです。
ちなみに憲法でも同じものがあります。こちらもおすすめです。
また、試験は短答ではなく論述ですので、インプット用の参考書の他にも、アウトプット用の参考書があると勉強が捗ります。おすすめは演習ノートシリーズです。編入後も使えます。
演習ノートの民法と刑法については読んだことがないので分かりませんが、図書館に置いてあったらパラパラ捲ってやってみてもいいかもしれません。
⑤政治学
政治学についても同様で、評判の良い参考書を列挙します。
どちらも名著です。これについてもどちらか1冊を熟読すればよいでしょう。編入試験に出題される政治学の事項については網羅できるはずです。
アウトプット用にはこちらがおすすめです。再び演習ノートシリーズです。
ちなみに北大の編入試験は法学と政治学が1:1の得点比率で出題されるので、政治学からは逃げられません。上記の参考書を熟読すれば、合格点は取れるはずなので、政治学が苦手だぞって方も挫けずに頑張ってくださいね。私は苦手です。
5.おわりに
超特大ボリュームになってしまいましたが、以上になります。
何かご質問があれば、プロフィール欄のメールアドレスからどうぞ遠慮なく私にご連絡ください。
それでは長々とありがとうございました。